師匠は語らない 拾参 ページ19
「……あいつには生前、たった1人の弟がいた。」
「弟……?」
土蜘蛛が首を傾げると、黒蜘蛛は「そうだ。」と言って話を続ける。
「あいつの、たった1人の家族。あいつのとこの家族構成は、随分変わっていてな。」
「……?」
土蜘蛛が分からないというように首を傾げると、黒蜘蛛はめんどくさそうに後頭部をがしがしと乱暴にかいて、口を開く。
「まぁ、変わってるっつっても、親が変わってるんだけどな。母親は人間、父親は妖怪。
別の種族同士で愛し合ってたんだよ。」
その言葉に、土蜘蛛は額に皺を作る。
「母親が人間……、という事は師匠は『半妖』と言うことか?」
「阿呆、半妖であんだけ化けモンみてぇな妖力持ってる奴がいてたまるか。
まぁ確かに親の片方は人間だけどな、あいつは生前の頃、妖怪ってよりも人間に近かった。」
「あいつは、という事は弟の方か……」
黒蜘蛛は頷いてニヤリと笑う。赤茶色の瞳が、部屋を照らす照明の光を受けて、一層怪しく光る。
「そうだ。父親の妖怪としての血筋は、全て弟に受け継がれた。あいつの方はほぼ零」
「……そんな事が、あり得るのか?」
「お前が追っかけてる
土蜘蛛はそう言われて、師匠の瞳の色を思い出す。父親から受け継いだ、唯一のもの。
家族として受け継いだ証は、妖怪になったいまも、しっかりと刻まれているようだ。
「しばらくして母親も、妖怪として寿命がきた父親も、2人を残して死んだ。
弟に残されたのは、父親の妖怪としての血筋と、たった1人の家族。」
「それが、師匠だったのであろう?」
その言葉に、黒蜘蛛は頷く。
「ああ、だが運悪く流行り病にかかってな体が人間だったあいつは、老いぼれになる前に弟1人残して死んじまったらしい。」
「それから妖怪に……、
だが、それを何故吾輩達に隠す必要がある?」
土蜘蛛は納得したような顔をして、その後、すぐに眉を寄せて問う。
黒蜘蛛はまだあざ笑うかのような笑みを顔に浮かべながら、土蜘蛛の反応を楽しむかのように告げた。
「今思ったけど、お前、本当にあいつのこと何も知らねぇんだな。」
「どういう意味だ……」
「お前らになんであいつが何も言わねぇのか。考えてみりゃあ単純だろ。」
黒蜘蛛は呆れたように土蜘蛛を見ると、ため息混じりに言う。
「守るためだ、お前らを。」
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♪ - リリディアさん» そうなんですか!?少しでも癒やしになってると嬉しいです(*´▽`*)私、宮崎で離れていますけど、遠くからリリディアさんを応援しています!! (2016年6月23日 20時) (レス) id: 31b9002b8a (このIDを非表示/違反報告)
リリディア - 音楽大学の附属中学校に行ってます(^o^)v更新頑張って下さいo(^o^)oおーえんしてます! (2016年6月23日 18時) (レス) id: c27278eda4 (このIDを非表示/違反報告)
リリディア - 学校が国立で、栃木にすんでるんですが、新幹線と在来線でいってます。癒しですよ(*´∇`*)この小説(*´∇`*) (2016年6月23日 18時) (レス) id: c27278eda4 (このIDを非表示/違反報告)
♪ - リリディアさん» バイオリンひかれるんですか!凄いですね!!私、リコーダーさえも吹けないのに!格好いいです! (2016年6月22日 19時) (レス) id: 31b9002b8a (このIDを非表示/違反報告)
リリディア - 更新頑張って下さい!僕もバイオリン頑張りますよ!キリッ( ・`д・´)そのうちYouTubeにだすかもです(^o^)v (2016年6月22日 7時) (レス) id: c27278eda4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:♪ | 作成日時:2016年5月7日 22時