比べられっ子【2j3j】 (ページ49)

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花は1輪ページ49

小柳side
小柳「久しぶり、壽さん」

壽【あれ？ロウきゅんじゃん。何したの？】

小柳「ロウきゅん言うなし」

丑三つ時、俺はとある墓地を訪れていた。

妖魔を退治する傍ら、“こういう類の者”も見える。

壽【昼間はありがとな。ロウきゅんのお陰で助かったよ】

小柳「ロウきゅん言うなって…………昼のって？なんの事？」

俺がそう聞くと壽さんは驚いた様な顔をしたがまた何時も通りの笑顔を俺に向けた。

壽【お前がそう言うならそれ以上は野暮ってやつだよな。けどありがとな、あの子に言葉を伝えられたよ】

力無く笑う壽さんを見て少し心が痛かった。

壽【今年は熱いんだってなぁ、熱中症対策ちゃんとしろよ？】

壽【しょうがないさ、それが人間なんだよ】

壽【お、ウェンとテツの事か。やっぱりあの二人はそうなるよなぁ】

壽【そんな所に座るとケツが汚れんぞ？それに俺は嘘は付いてない！Aが見つけられて無いだけだ！】

壽【いいじゃんか、優しい同期に囲まれて】

壽【………………俺だって、ずっとお前を守ってやりたかったさ。けど、けどさ！】

その言葉を聞いて何故かその言葉を聞かせなければならないと思って一瞬だけ力を使った。

壽【安心しろよ、お前の事ずっと見守ってるからさ！】ﾆﾊﾟｯ

小柳「彼奴、帰ってきてからもずっと泣いてたよ。結局泣き疲れて寝ちまったけどさ」

壽【そっか……………悪い事しちまったな】

悲しそうに笑う壽さんに俺は言葉をかける。

小柳「いてやればいいだろ。離れるんじゃなくて」

俺の言葉に壽さんはまた驚いた様な顔をしたがすぐに笑顔に戻った。

壽【それは出来ないな。あの子は“そういう類の奴”を連れ過ぎてる。それに俺があの子所に行けばそれは呪いになる。祟り神になる気は無いからさ】

壽さんはニカリと笑ってそう言った。

小柳「………………そっか。なら向こうに帰んの？」

壽【うん。そろそろ帰んないと怒られる。…………その前にこれ、あの子に渡してやってくれねぇ？】

そう言って壽さんは俺に何かを投げた。

小柳「あぶねっ…………なら俺はこれやるよ」

ポイッと壽さんに1輪の花を渡した。

壽【！……………ありがとな、ロウ。あの子を頼むよ】

優しく笑った壽さんは美しい花に包まれて消えてしまった。

地面を見ると1枚の竜胆の花弁が落ちていた。