比べられっ子【2j3j】 (ページ47)

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一番最初に忘れるのはページ47

Aside
人間が一番最初に忘れるのは声だ。

どれだけ覚えていようとしても何時かは忘れてしまう。

かくゆう私もそれに属している。

“彼ら”の声を忘れてしまった。

過去に私とバディを組んでいた彼、私を愛し育ててくれた彼らの声を私は自分の記憶から抹消してしまった。

『どんな声、してたかな』

蝉が煩く鳴く蒸し暑い季節、私は花と手桶を持ってとある墓地を訪れている。

『小夜子様、道永様、A参りました』

手を洗ってから墓石の掃除を始める。

『この前は来れなくて申し訳ありませんでした。熱で寝込んでしまって……』

墓石に話しかけながらも掃除の手は止めない。

粗方掃除が終わり持ってきた手桶の水を水受けに入れ花を添える。

『勉強も順調です。この前の模試も全教科100点で学年1位でした。ですが料理はまだ小夜子様の様に出来ません。よく失敗して所々焦がしてばかりです。小夜子様のレシピ道理にやっている筈なのですがやはり難しいです。この前の卵焼きも小夜子様の様に甘く出来ませんでした』

お供え物を置きながら言葉を続ける。

『道永様の遺言書通り遺産目当てで家に来る方も多いです。中には子供にそんな金要らないだろと怒鳴る方もいらっしゃいました。今は怒鳴る方もそこまでいる訳ではありませんが居ないわけではありません。ですが皆様、道永様の遺言書を読んで納得なさって下さいます』

墓石に水を掛ける手を止め、私は墓石を見る。

『御二人の顔に泥を塗らぬ様精進しているつもりなのですが、やはり難しいものですね』

手桶とお供え物を持って私は墓石に頭を下げる。

『“蘆屋”家の名に恥じぬよう精一杯頑張ります』

蘆屋家と書かれた墓石にそう言葉を掛け、私は次の墓石に向かい歩き出す。