比べられっ子【2j3j】 (ページ32)

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その感情の名はページ32

小柳side
母上は何時も俺に言っていたことがあった。

母親「いい事？ロウ。貴方は強いわ、けれどねその強さは誰かを守る為に使いなさい。例えば貴方が“恋”をした相手とかね？」

母上はそう言うと意地悪そうに笑った。

当時の俺からすればなんの事かさっぱり分からなかった。

守りたい奴なんて居ない、そう思ってたんだ。

そんな会話をした数十年後、母上に連れられてとある人間の老夫婦が住む家に向かっていた。

母上曰く、古い知人らしいその人達が最近養子を迎え入れたらしくその養子を見に行くから着いて来いと言うものだった。

？？「おやまぁ、白狼のお嬢ちゃん久しぶりねぇ」

母親「私からすれば貴女の方がもうお嬢ちゃんよ。ほんと久しぶりね、“小夜子”」

“小夜子”と呼ばれた女性はにこやかに笑い家に入る様にと言った。

母親「養子を取ったんでって？どんな子？」

小夜子「待って、今呼ぶわ。“A”ちゃ〜ん、ちょっといらっしゃい」

女性がそう呼ぶと微かに人の気配がある。

部屋の襖がゆっくりと開きそこから顔を覗かせた少女と目が合う。

ドキンッ

胸が締め付けられる様な感覚が俺の中に溢れる。

母上と昔話した言葉をその時理解した。

“この子を守りたい”、と。

そして同時に俺はAに恋をした事を理解した。

けれど俺の中に1つ嫌な感情が生まれた。

“今すぐ死を望む”お前と“人間より長く生きる”俺。

俺はお前に恋をしたがそれと同時にお前を“死にたがり”と認識してしまった。

俺は今でもそれを悔いている。

そんな事思わなければもっと早くお前の傍に居れたかもしれないのに。