マイホームのpiece（かけら）～黄～ 14 (ページ34)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:60,531 hit

403-3　あの日の思い　：　no･side ページ34

．
　言葉をきった亨の頬を涙が伝う。

　それを袖で拭って、

亨「誰かの『先生！』って声が聞こえて、慌てて先生が亮に声かけてた。
　『保健の先生呼んで来い』って先生に言われた誰かが、
　保健室に走って行くのが見えたんや」

　もう一回息を整えて、

亨「最初はだた見てるだけで、何してん？って感じやったけど、
　保健の先生が来て、亮に向かって大きい声で呼びながら
　心臓マッサージ始めたのを見て、ただただ怖いだけで。
　その場に座り込む奴や、泣き崩れる奴まで居った。
　それにその場から逃げ出す奴まで居ったから、
　俺、そいつの腕をとっさに掴んでた。
　そいつは率先してボールをぶつけようやって言うてた奴やったけど、
　『俺、ちゃうし』って掴んでた俺の手を振り払って走って行ってしもうた。
　俺はただ、そいつの背中を見る事しか出来へんかった。
　そのうち救急車が来て、運ばれていく亮を見送った後も、
　亮に向かって叫ぶように言うてた先生達の声が、
　俺ん中でずっと響いててん」

　改めて亮に向き合うと、

亨「亮、生きててくれてありがとう。
　一緒に卒業できるのが、ホンマに嬉しい」

　って、最後はほぼ泣きながら言うてる。

　教室にあるのは、

　誰かのとは分からない啜り泣きと、

　亮へのあったかい視線やった。