116-1 記憶 ： 章大side ページ20
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廊下に出ると、お昼前やったからか結構な人数が病棟にいたみたいで、
子供たちの野次馬が大きな輪を作ってた。
その中に、人をかき分けて入っていくと、
真ん中に倒れた亮が居て、
その胸を圧迫してる先生と、
周りには処置したり、移動する準備を整える看護師さんがいた。
その誰もが亮に大きな声で声を掛けてた。
あれ？
僕こんな感じ前にも見た気がする。
その時に聞こえたのは看護師さんたちの声やなくて
……裕兄たちの声やった。
そうや、空港近くの病院に呼ばれた時や。
そこで僕たち七人以外にも多くの家族が帰って来た家族に会えたんやった。
でもその帰って来た家族って、もう死んでたんや。
その時の光景に似てる。
あれは三年ほど前、僕らの両親は旅行に行った。
うちはそんな裕福やなくて、福引で当たった海外旅行。
両親も初めての海外旅行で、
ウキウキしながら『お土産何がいい』なんて二人して兄弟みんなに聞いてた。
旅行に行く日は七人で見送って、
『行ってきます』『いってらっしゃい』って笑顔いっぱいで見送って、
なのに、ほんの数日後には帰ってくる飛行機の事故で亡くなった。
俺らは帰ってくる予定時間のずいぶん前に、
飛行機事故についてテレビのニュースで知った。
でも、その事故した飛行機に両親が乗ってるとは思ってなくて、
他人事のように『大変やなあ』って話してた。
なのに、そのすぐ後に電話が鳴って、
事故した飛行機の搭乗者名簿に両親の名前があると連絡を受けた時は、
最初信じられへんかった。
七人が七人とも
『嘘やろ？』
って思いながら、指定された病院に向かったんや。
病院には同じ飛行機に乗っていた家族で溢れていた。
遺体の搬送に時間がかかっていたから、
それをじっと待っていた時間が不安で仕方なかった。
その間誰かがずっと手を握ってくれていて、
それがすごくあったかかったのを今でもはっきり覚えてる。
何も言わずにずっと帰るまで握り続けていてくれていた。
あれがなかったら、
僕はきっと泣いて泣いて仕方なかったと思う
……怖かったんや。
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作者名：にと | 作成日時：2016年7月18日 18時
