102-2 誤解 ： 章大side ページ44
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部屋まで来ても、まだ興奮したままで、
それでも裕兄はゆっくり待ってくれた。
そのあとコップに入ったお水を丁寧に手に持たせてくれた。
その時、握らせてくれた手が温かくて、
今までこの心地よさを忘れてるのに気が付いた。
なんでこんなこと忘れてたんやろ？
って思えて、不思議やった。
裕「……ちょっとは落ち着いたか？」
って、聞かれて、
本当は全然そんなことなかったけど、
頷いた。
その方がいいと思ったからや。
別に聞きたい話は裕兄からやない。
やから、さっさと終わらせて、
もう一回さっきのみんなと話そうって思ったから、
ここは素直な振りをした。
でも、裕兄があまりにも話を進めないから、こっちから聞いてみた。
死ぬって慣れるん？
って、でも、肝心の答えは返ってこなくて、
やっぱり子供と大人は違うんやって思った。
これ以上ここで裕兄と話す必要が見つけられなくて、
もう立とうとした時やった。
裕「あのな、章大。人はな、まずは自分なんやで？
自分に余裕があれば、他人を気遣えるんや。
でもな、ここにいるみんなは、
もう自分のことで精一杯頑張ってんねん」
そこで一旦言葉を区切って、僕を見つめる。
手をギュッと握って、
裕「章大はこの中では、手術が終わって間がないけど、元気な方やで？
でも、みんなは、自分の病気で手一杯なんや。
長い子は一年以上自分の病気と闘ってる。
章大みたいに、早くちゃんと治るって思える病気の子ばっかりやったら、
今回進君が亡くなったことを真正面から受け入れて、悲しめるかもしれん」
そこで大きく深呼吸してから、
裕「でも、もしもやで、章大が進君と同じような病気で闘ってたら、
今の章大と同じように思えるやろうか？
もしかしたら、自分も進君と同じになるかも、って思うかもしれんで？
そんな時進君が亡くなったんを悲しむ前に、怖くなるとは思えへんか？
明日進君と同じになってるかもしれんとか？
明日でないにしても、治らないんやないかって不安になるかもしれん」
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作者名：にと | 作成日時：2016年6月28日 15時
