マイホームのpiece（かけら）～黄～ 3 (ページ39)

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98-2　朝の光　：　亮side ページ39

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裕「亮？」

　振り向いた裕兄に、俺はまっすぐ向き合って、

亮「夜の間に、進が家に帰ったって聞いてん」

裕「それは聞いたで、で？それがどうしたん？」

亮「進と同じ部屋やったやろ？章ちゃん仲良くなったみたいで、いっつも一緒に居った。
　昨日の夜……急変したんやろ？それ見てたんやと思う。
　朝、食堂で看護師さんに訊いてたんやけど、
　『家に帰った』って言われても、
　急変したまま退院出来んって思ったみたいで、何回も聞き直してた。
　『家に帰るってこと』が『亡くなったってこと』には気が付いてなかったんや。
　俺らにはそれだけで分かることも、
　章ちゃんには……初めてやったから」

　って言うと、

裕「そっか、それでな。この空気、なんかあったとは思ったけど、
　ここで章大が声を荒げたんやろ？何となく想像つく。
　それを亮が宥めてくれようとしたんやな。ありがとうな。
　亮やって進とは仲良かったし、
　でも、進、頑張ったんやで、最期まで、絶対諦めなかった。
　それは俺が保証する」

　と、力を込めてる。

亮「裕兄が自慢してどうするん？それ、いつでもええから章ちゃんに言ったってな。
　ショックやったと思うし。
　それに、もしかしたらやけど、
　親の時と同じ感じに思ってるんかもしれん」

　それには不思議そうな顔をする。

裕「なんのこと？親って、三年前の？」

亮「そう。あの時、裕兄たちは遺体に会えたやん？
　でも俺ら二人だけ小さいからって、最期の二人に会ってないねん。
　会わんまんまさよならしたんやで？
　あの棺には居ったはずやのに。
　やから、ホンマに死んでしもたっていう実感がない。
　俺でさえそうやから、
　 ……もしかしたら、章ちゃん、今回のことで思い出したんかもしれん。
　だとしたら、可哀想過ぎるで？」

　と、真剣に話してた。

　裕兄はその後、なんか考えながら部屋を出て行った。

　たぶんなんか考えてくれるはずや。

　裕兄が出て行った後、閉まってたカーテンを開けた。

　俺以外のベッドはカーテンなんてとっくに開けられてた。

　閉める前より明るい陽射しが差し込んでた。いつも通りの朝が来た。