16-2 アドバイス ページ43
.
正直こういわれた時、ありがとうとか、助けてくれたってより、
『格好ええ！』って感動してもうた。
それに、なんで俺の事そんな知ってんの？
確かに言われた通り、試験にしても発表会にしても、
観客とか入ると誰のために弾いてるんか迷ってもうて、
で、迷ってる間に弾き終わることの方が多くて、
実力なんて発揮出来へんかったから、
それに悩んでたのは誰にも言うてなかったのに、
まんまと見透かされて、
しかも、
「なあ、今度の単位認定、伴奏したるからさ。
お前の本当の音聴かせてくれへん。
誰にじゃなくて、俺のために弾いてや」
大勢の前で言ってくれて、
俺らを取り巻く雑多な人数の 取り巻きをある種置いてきぼりさせた上で、
「アカン？」
って、首傾けて見上げるから、
騒然と、というより悲鳴があっちこっちから巻き起こってしまい、
いや、そんな悲鳴も俺の 耳には届いてなくて、
俺には亮ちゃんの甘い声の『俺のために弾いて』って言葉に酔いしれてた。
その時の発表は、
今まで一番の出来で単位も取れたし。
言うことなかった。
しかも、
「なあ、お前さ、調律してみたら？
さっきのも自分で合わせてたやろ？
それであの音出せるならさ、
せめて自分の時のピアノ 自分で調律したら？
そこまで本格的やなくても、それで自信もって弾けるなら、
お前のその 耳、ええ役に立つと思うで」
そう言われて、以前から興味があって聞きかじっていたのを、
改めて本格的に調律の勉強始めたら、
これが思ってるより奥が深くて面白い。
気が付いたらそっちにのめり込んでいた。
それにやで、あの時文句言ってた奴らが、
「あの時はゴメン。お前才能あるやん。感動したよ。
お前が調律してくれたピアノ、今まで一番弾きやすい」
謝ってくれた上に、ある意味絶賛してくれたし。
あれから、何というか俺は表舞台に立つより、
こうやって裏方の方が合ってるんちゃうかって思って、
それからは何でもいい方に回り出し、
就職も調律師で上手くいってる。
亮ちゃんのアドバイスのお陰や、
あの一言で俺を決断させてくれたんやから。
もう、最高にツイてるやろ？ って、
自慢したいくらいやねん。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 109人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：にと | 作成日時：2019年4月6日 12時
