かけがいない光：黄・緒（いとぐち） (ページ41)

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15-3　出会いページ41

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　それからは全然会わずにいて、
　俺はお兄ちゃんの言う通りに歌を歌うように心がけて、
　それが良かったのか、
　前よりも歌うのもピアノを弾くのも楽しくなった。

　今まで思いもしなかったけど、
　音を表現するのが面白くなった。

　いつしかこれを極めたい。

　そう思って気が付いたら、
　歌のコンクールを総なめしてた。

　さすがに、これほどとは自分でも思わなかった。

　いつかまた会えたら、お兄ちゃんにお礼言わなって思う。
　あの時のあの言葉がなかったら、
　こんなに気持ちよく歌えてたか分からんし。

　それがあるコンクールに出場するために訪れた会場で、
　お兄ちゃんの姿を見た。

　俺から声をかけられなかったけど、
　お兄ちゃんが見つけてくれて、

「おっ、あの時の歌上手いのに、ピアノが下手な子やん。
　さっきの歌聞いたで、やっぱ上手くなってるやん。
　っていうか、お前あん時よりデカなったやろ？」

　笑いながら大きい声で話しかけてくれて、
　みんなの注目を浴びて恥ずかしかったけど、
　お兄ちゃんはその時すでにはもうかなりの有名人やったから、
　その人から声をかけてもらえるなんて、
　周囲から向けられる羨望の眼差しに、
　言葉に出来ない程の優越感を感じた。

　それもあって嬉しくて嬉しくて舞い上がってたのは、
　記憶に新しい。

　その時交換した連絡先、事あるごとに連絡させてもらって、
　出演する会場には時間が合えば行っていたし、来てもくれた。

　その頃にはお互い名前で呼び合っていた。
　忠義と呼んでくれて、
　俺はお兄ちゃんから亮ちゃんに変わってた。

　大学の学内発表で亮ちゃんは、
　自分の演奏以外にもいろんな人の伴奏も頼まれていた。

　それぞれの発表時に伴奏をし合うらしいけど、
　亮ちゃんに伴奏してほしい人が多くて、
　競争率は高かったみたい。

　というのも、
　伴奏が良ければ自分の演奏の価値を上げられるかもしれない、
　実力者に一緒に演奏してもらうことで見る者の目も向きやすい。
　注目を浴びやすくアピールもしやすくなると、
　そう考える人が多いからかも。

　
　それが、亮ちゃんの人気に拍車をかけた。