15-2 出会い ページ40
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「なら、弾いたるから歌ってみ？」
って、
今度は俺がさっき歌ってた歌を弾き始めて、
「お兄ちゃん、知ってるの？」
って聞いた。
やってこれ、学校では流行ってるけど、
世間的には全然聞かん歌やのに？
「いや。でも、お前が歌ってた」
それだけでこんなに弾けるもん？
聞いたこともない歌を、こんなに正確に？
「お前が歌ってたから、俺も弾けたんやで。
お前歌上手い、もっとちゃんとレッスン受けたら、
声も出しやすくなるし、歌うのも楽しくなるで」
めっちゃ綺麗な笑顔があった。
「ピアノも一緒や。歌うみたいに指動かしたら、
歌うみたいな音が出る。
ピアノと一緒に歌う感覚やな」
振り返った姿は、
こっちが照れてしまう程、キラキラしていた。
それからすぐに俺のレッスンの時間になって終わって出てきたら、
お兄ちゃんはもういなくて、その代わりに、
「あれ、また新しいCD出るんだ。でも、いつ来たんかな？」
って、その先生の言葉に、
「また？ CD？」
俺のその声に、
「この子ね、小さい頃から歌うようにピアノを弾く子で、
いろんなコンクールでたくさんの賞をもらってたし、
高校生なのに音楽事務所に所属して、
ピアニストとしてCDも何枚も出してるのよ」
そう言いながら、
先生は嬉しそうにCDを俺に見せた。
「ほんの一年ほどしか、教えてないんだけどね。
新しいCDが出る度にこうして持って来てくれるの。
優しい子よね」
ニコニコしてる先生の顔が、優しく見えた。
「名前は？」
「えっ、知らない？ 『亮』って言うの」
その名前なら、俺でも知ってる。
天才ピアニストとして超有名で、
音楽に関わってる人の間では、たぶん知らない人はいない。
俺、そんな人の伴奏で歌ったん？
「なんで、ここに？」
居るん？ って疑問が浮かんで、
「実家がこの近くだから、帰ってきたのかしらね。
今は音大付属高の寮にいるはずだから」
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作者名：にと | 作成日時：2019年4月6日 12時
