かけがいない光：黄・緒（いとぐち） (ページ38)

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14-3　ミルクティーページ38

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　そこに割って入る勇気もなければ、
　援護できるほど肝も据わってへん俺は、ホンマに野次馬やった。

　同乗していた子どもの事は知っていた、
　俺が一方的にやけど。

　その子は亮ちゃんのコンサートでは必ずと言っていい程来ていたし、
　親しそうに話してるのを何度も見かけた。

　気になって、
　あの子の歌を聞きに行ったこともある。
　世間が騒ぐのが嫌でも分かる、
　あの子は天才や。

　その子の声を奪った事故を俺は許されへんけど、
　それでもそれは亮ちゃんに責任はない。

　むしろ、被害者やし。

　それでも人のうわさは恐ろしい。

　それから亮ちゃんは、
　予定されてたリサイタルやらレコーディングを終わらせた後に、
　姿を消した。

　それを誰かが探すこともなく、
　忘れられたかの様に時間だけが過ぎて、

　気が付いたら、
　誰も亮ちゃんの事を口にする者もいなくなっていた。

　具体的にいつ居なくなってたのかすら、怪しかった。

　俺ですら、その時は自分の事で精一杯で、
　亮ちゃんどころか自分の日常生活でさえ危なかった。
　練習練習で時間は無情にも過ぎていったから。

　でも、
　それは突然訪れた。

　就職してしばらくしてから訪れたコンサートホールで、
　ピアノの調律をしてたら声をかけられた。

「以前、亮ちゃんに伴奏してもらってた方ですよね？」

　それが、忠義と俺が、
　初めてちゃんと話した時。