14-1 ミルクティー ページ36
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一人暮らしの部屋に忠義を連れて来た。
まだ忠義は放心状態で、何とか座らせて、
ミルクティーを飲ませようとマグカップを持たせた。
「忠義。ちょっとでええから、飲んで」
何も言わずカップに口をつける忠義を見て、俺も息をついた。
「今日は泊ってってよ。一人暮らしやし、
こういう日くらい誰かと一緒に居りたい」
俺の我儘を聞いてくれるか分からんかったけど、
「ええよ」
頷いてくれてホッとした。
今は、忠義を一人にしたくない。
「また会えるんかな？」
不安そうな声がして、俺まで不安が押し寄せてきた。
「大丈夫やって。また会えるようにあの店に居ってって言うて来たし。
あのマスターは、意外に信用できるから」
思ったより落ち着いて話が出来てる気がしたのに。
「まるちゃん、震えてるやん」
って、手を握られた。
握った本人の忠義も、
「俺だけやないやんか、忠義もやろ？」
微笑んでから頷く忠義を見て、
俺の方が落ち着いて来た。
「そうや、またあの店行って、亮ちゃんに会おう。
そんで亮ちゃんにピアノ弾いてもらおう。
すぐには無理でも、いつかきっとまたピアノ聴きたいわ」
俺も微笑みを返す。
たぶん忠義は、
亮ちゃんにまた会えなくなるかもしれないって不安を感じている。
それは、俺も同じで。
でも、今はそれ以上に会えた嬉しさの方が大きい。
体が震えたのは、それを実感したからかもしれない。
だからと言って、
わだかまりはそう簡単には拭えないものなんだろう。
「……俺から会いに行ってたら。変わってたんかな？」
当時を思い出したのか、
忠義が自分を責めるように口にした。
「……誰も悪ない」
と、言いながら、自分にも言い聞かせた。
あの時、声をかけてたら……。
俺はあの事故が起こった当時、
亮ちゃんと同じ音大に居た。
亮ちゃんは、当時から誰よりも才能が秀でていて、
音大なんて難関の見本みたいな場所に特待生として入学していた。
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作者名：にと | 作成日時：2019年4月6日 12時
