13-1 ブルームーン（出来ない相談） ページ33
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背後の窓の向こうに広がる夜景は、
酷くすっきりとしていて、
見える光の渦が足元にある。
その華やかさが見ているだけで伝わってくる。
それに反して、
俺たちの間にあるのは、
声を出すのも憚られるような張り詰めた空気と、
それに呼応した亮ちゃんと俺らの気持ちの差。
それに追加して、
共有できなかった時間の長さ。
「逃げたんや」
出たのは一言だけ。
それに続くのは、
「何から？ どこから？ 誰から？」
忠義の感情を抑えた声が畳みかける。
「全部から」
返ってきたのはたった一言。
「全部って、なんよっ！」
やや声を荒げた忠義。
「全部……ピアノも音楽も。……家族や知りあいから」
淡々と語られる声に、感情が読み取れない。
「なんで、なんでなん？ そん中に……俺も入ってるんやろ？」
泣き崩れそうになりながら、次の言葉を待つ。
でも、それ以上何も言ってはくれなかった。
答えの代わりに、
俺ら二人の前に出されたのは、
淡い紫のカクテルやった。
それはアルコールが利いていたが、
のど越しはさっぱりとしていた。
俺は、仕方なく『ここから居らんようにならんといて』とだけ、
はっきりと告げてから店を後にした。
がっくりと肩を落とした忠義を支えて。
忠義を支えて歩きながら、
あの事故当時の新聞記事やニュースの内容を思い出していた。
当時、亮はもう十分有名やったし、
将来をかなり期待されとったから、
死亡事故ではないのに、
かなり大きめの重大事故みたいな扱いやった。
それでも最初は、
事故にあったが軽傷やったからと、
誰もが良かった良かって内容やったんや。
ホンマに……最初だけは。
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作者名：にと | 作成日時：2019年4月6日 12時
