12-1 探し人 ページ31
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しばらくお互いに沈黙したままでいると、
「ほら、連れて来たったで。丸」
村上君というマスターに押し出されるように、
俺らの前に連れて来られた人。
「……うん、ありがと。ちょっと話してもええ？」
と、丸山から話す。
「ああ、どうぞ」
マスターは見守るって言う体制に入ったみたいで、
「で、なんなん。前に会ったやん。それではアカンかったん？」
不機嫌丸出しやし、
それでも、
丸山の言う通りそっくりや。
俯いてるからはっきりは分からんけど、
声がそのものや。
「あの時は、びっくりしてん。
美味しかったんはその通りなんやけどね」
言葉を切って、たっぷり一呼吸置いてから、
「お礼言いたいんもホンマやけど、
それより大事な用があって今日来させてもらってん。
俺……調律師してるねん。だいぶ前から」
って言うたら、肩を震わせる。
そのまま奥に行こうとして、マスターに捕まる。
「ちゃんと話が終わってからや」
と、事情を何となくでも察した村上君に動きを止められて、
それでも顔を上げない。
一応礼儀的にマスターであり雇用主の村上君のお陰で話せる訳やし、
って思って頭だけ下げると、村上君も頷いてくれた。
それから改めて話を続ける。
「もう、いいやろ。俺な、いや、俺達な、ずっと探しててん。
なんで居らんようになったん。
なんで消えたりしたん、亮ちゃん！」
最後は叫ぶように声を上げて立ち上がる。
「忠義はな、あれから……出んかった声が出るようになってから、
必死になって稽古して、やっと今芽が出てん。
それまでどんだけ大変やったか、
それでも、ずっと探しててんで！」
と、興奮した丸山をどかして、
「亮ちゃん、会いたかった。ずっと……ずっと探してん。
いろんな人に声かけて、
この世界入ったら分かるかもって思いながら探してん！」
声が出えへん。
掠れてるのが自分でも分かる。
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作者名：にと | 作成日時：2019年4月6日 12時
