8-2 唐揚げ ページ24
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で、作業を終えると、
「お腹空いた。なんかお腹に溜まるもんがええなあ」
ここ、食堂ちゃうで。
でも、
「何がええねん」
丸やしな。
「何が出来るん、こっちが聞きたいわ」
「ああ、今日は唐揚げと焼きそば……あとは生姜焼きとかやな」
目の前には目を丸くした丸……調律師の丸山な。
ややこし。
「居酒屋さんみたいやな」
その通りやと思う。
今日は亮が居るからな、
仕入れはばっちりやろ。
「で、何がええねん」
「そやね。唐揚げ、ごはん付きで」
って、
「ここ、定食屋ちゃうで」
「知ってる。でもお腹空いてるんやもん」
とりあえず奥に注文通したら、
案外すぐ出てきた。
「ほい、これでええか？」
お膳に乗った唐揚げとご飯と、
「おお、お味噌汁まで付いてるぅ。最高やん！ いただきますっ」
手を合わせながら、ルンルンって鼻歌まで付いてきたで。
「ごゆっくり」
それから客が来るわけでもなく、
丸が美味しそうに食べ終わると、
「ごちそう様でした。これ、誰が作ったん、おいしかったで」
って、満足な顔して言うから、
「バイト。居酒屋でもバイトしとんねんて」
「へえ、バイトの掛け持ちとか大変そうやね」
「色々かけ持っとるみたいでな、何でもできるで。
前はあのジュークボックスの配線とかしてくれたしな」
視線を向けると、
「へえ、何でも屋さんやん」
「そうやで、それにピアノの音がずれたん、
最初に気がついたし」
って言うたら、丸の顔色が変わった。
「……なあ、その人に会わしてもらえる？
ほら、美味しかったし、お礼言いたいやん」
って、さっきとは違う冷静な声で言うから、
「ええで、今呼ぶわ。亮！」
俺がやないけど、褒められたんが嬉しなって、
裏に向かって呼ぶ。
「りょう？」
って言うた丸の声は、
俺には聞こえへんかった。
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作者名：にと | 作成日時：2019年4月6日 12時
