8-1 唐揚げ ページ23
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しんみりと時間が過ぎていく。
今日も店は綺麗な景色を床やテーブルに映し出す。
カロンッ！
「ヒマそうやね」
入って来たのは、
「ヒマで悪かったな。それよりなんや今頃来て。
俺は開店前にって言うてたんやで」
と、ピアノの前で道具箱開ける丸に言うたった。
「俺はヒマちゃうの、忙しいの。なのに、
急に来いって言われても、なかなか動きはとれんのよ」
ブツブツ言うてるし。
というのも、
せっかく調律してもらったのに、
酔っぱらった客が
ピアノの弦に手を触れるなんて非常識なことするから、
調子悪なったんやんか。
で、緊急で来てもらおうと思ったら、
これまた時間が合わず、今になった。
当然その客は、出入り禁止にしたけどな。
ついでにそいつ連れて来た客も。
常連でも非常識な奴はいらんねん。
大丈夫、一人や二人居らんなっても、
平気……いや、大丈夫……やで。
「せめて、開店前に来てくれや」
「ええやん。今日は生演奏ない日やろ？ それに客、居らんやん」
店内を見回して言うと、
「うるさい。さっさと直して帰れ」
って言うたら、
「ええ、俺これ直したら、なんか食うて行こうと思ってんのに、酷いわ」
泣きそうな顔してるけど、
「丸、お前のその顔、やめてくれ」
気をよくしたんか、
「ん、ソソラレル？」
「んな訳あるか！ 気持ちワルなんねん」
「はあ！ そう言う言い方あるん。
せっかく忙しい合い間縫って来たったのに、帰るで」
興奮気味の丸。
「分かった。分かったから、直してくれ。
明日生演奏の日やし。直ってないいと困んねん」
と機嫌を取ると、
「ええよ。でも、おごってや」
と、催促。
丸、なんやねんその言い草。
こんな時間に来やがって。
「ったく、それが目的やったやろ」
「そんな訳ないやん。村上君が喧嘩振ってきたくせに」
「誰がや」
と、手を動かしながら作業を続けとったら、
急に静かにしてと言いよるし。
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作者名：にと | 作成日時：2019年4月6日 12時
