7-2 臨時 ページ22
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声は小さめやのに、
はっきり聞こえるやん、
気持ちまで。
「亮、早めに上がってええで」
って、言うてまうやろ？
「えっ、いいですよ」
と、びっくりしてるけど、俺もびっくりや。
てっきり早く上がりたいんやと思ったちゅうねん。
「帰りたいんちゃうの？」
それには、目を丸くして、
「いいえ、そんなんちゃいますよ」
ちゃうらしい。
なら、なんでこんなに機嫌が悪いん？
「不機嫌の原因なんや？」
「おれ、ですか？」
いやいや、めっちゃ不機嫌やし。
「他に誰が居るねん」
バイトは他にも居るで、
でも、不機嫌なんお前しか居らんやろ？
見てみ、みんなニコニコしとるやないか！
と、客の 手前つっこめず、
「なんか気になることでもあるんか？
慣れへん曜日に来て、困ったとか？」
機嫌取るために、
悩み事聞いたろやないか。
「いいえ、なんもないですよ」
嘘つけっ！
そんな顔してると、気になるやん。
「ホンマか？」
って言うたら、
「あえて、言うなら」
ほら来た。
「BGMが気に入らん。ですかね」
って、
「はっ？ BGM……って？」
これか、この日のメニューは固定やし。
これに常連さんいっぱい居るし、
週に二日あるこの人の固定の日やで？
今更、変える気ないで。
「いいですよ。今日はこれって決まってるんでしょ？
なら、構いません」
と、機嫌変わらんやん。
「なんでなんや、……そう言えば、
前もそんなこと言うとったな」
もしかして、お前の方が……。
「なんでもないです。それより、俺、
この人の日は次から呼び出されても来ませんから」
と、素気無く奥に引っ込んだ。
「は、なんでや。それこそ俺が困るやんか」
言うてみたところで、返事はない。
「なんでやねん」
それでも正規の日はちゃんと来て、
ちゃんと仕事をこなすから、
こっちも文句は言われへんのやけど。
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作者名：にと | 作成日時：2019年4月6日 12時
