かけがいない光：黄・緒（いとぐち） (ページ3)

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1-1　　ジントニックページ3

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　日中の明るい太陽が沈み、
　夜になるとビルの窓から漏れる明かりと、
　街灯やネオン看板などの明かりが街を明るく彩っていく。

　それを中層階にあるこのバーの窓からも一望できる。

　少し暗めの間接照明が照らす店内は、
　大人の雰囲気を漂わせていて、
　夜が深くなると、このバーにも人が足を運んでくる。

カロンッ！

　軽やかとは言い難いドアベルの音が店内に響くと、
　音と違って軽くドアが開く、

「いらっしゃい」

「どうも。いつもながらいい景色。なのに、いつ来ても空いてるね」

　この店の売りでもあるドアを開けてすぐに目に入る夜景は、
　店内が暗いおかげで良く磨かれた床とテーブルに色とりどりの明るさを反射させる。

　暗い店内は人が多くなければ、
　それなりの明るさを保っているのは、
　そういう造りだからだろう。

　今も、まあまあ明るい。

「まあ、いつもどおりですね。何にします？」

「いつもので」

　軽い挨拶代わりの言葉を交わしてカウンター席に腰を掛ける。

　しばらくしてカウンターに座った男の前に、
　一杯のカクテルが置かれる。

「いつも通りの味がする。うまいな」

　手にしたのはジントニック。
　カクテル言葉は『希望を捨てないあなたへ』だと教えてくれた。

　仕事で疲れて飲み会を抜けてきた時に、
　ふらっと初めて立ち寄ったこのバーで、
　何も言わずにカウンターに突っ伏した俺に、
　出されたこのカクテル。