5-1 注文 ページ14
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あれから常連さんになってくれた忠義さんも
ここでの舞台が終わると、当然のように来なくなる。
また機会があれば顔くらい出してくれるだろうなんて思いは、
いずれが来るまで置いとくとして。
今は、別の舞台が行われているから、
ここに来てくれるようにと、
まあ、俺も営業はしてるわけで、
新しい団体さん用にチラシを舞台関係者に配って回った。
それが功を奏して、
舞台が終わったタイミングで、
団体さんとまではいかないが、
数人連れ立って来てくれるのはありがたい。
「マスター、おかわりもらえる？」
と、グラスが開くペースが早いのは、
明日も公演があるために、
早めに終わらせようとしてるからで、
「同じのでいいですか？」
「い〜いで〜す」
明らか出来上がってるやろ？
「じゃあ、皆さんおかわりで」
作った順に空いたグラスと交換する。
すぐ伸びてくる手が、
今入れたばかりのグラスを空けていく。
「……」
見る見るうちに空いて行くグラス。
「ごちそうさん」
と、お金がカウンターに置かれて、席を立つ劇団員たち。
「またのお越しを」
と、送り出す。
が、
「ここ、居酒屋ちゃうねんけど。もうちょっと、
アジのある飲み方出来んのかいな……はぁ」
息、吐いてもうたやん。
BARにはBARでの飲み方があるねんけど、
誰か教えてやれよ。
「珍しいですね。マスターが溜息つくなんて」
いきなり声をかけられて、振り向くと、
「あ、なんや亮か。ため息なんかついてへん、大きい息を吐いただけや」
言い訳かよ、って分かりやすいな。
「それ、言い訳ですか？ そんなんより、
酒屋から問い合わせあったんで、
後で連絡しといてくださいね」
と、一言だけ言うと、奥へと引っ込んだ。
そんなんよりって……。
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作者名：にと | 作成日時：2019年4月6日 12時
