ほら、何でも話せる ページ32
別に守ってくれなくたっていい。私は頼んでない。
―今のあなたは守られないと生きていけない。
生きたくなんて無い。死んでよかった、あの時兄さんが受け止めなければ。
―人のせいにするのは良くないわ。運も実力の内って言うじゃない。
人のせいにしないとやってらんないよ。ねえ、教えてよ。私はどうして死ねないの？
―あなたが生きたいと願っているからよ。呼吸をして、腹をすかして、眠って起きて、あの飛び降りるときだって、震えていたわ。あなたは、生きたがっている。
じゃあどうして、私は本当のことを言えないんだろうね。
―……素直に、なりなさい。
sn「Aちゃん！！」
『ぺし、ん…っ』
あれ。
『私、泣いてる…？』
何で。
sn「…何て書いてあったん？」
『私は、生きたがっている。素直になりなさい…』
sn「そか。じゃあ、何でも言ってご覧。俺が全部聞いてあげる」
それから私は、ペ神に色々な事を話した。
親が死んだ経緯、此処に来るまでの事、此処に来てからの事、不安や悩みなど、自分の抱えている全てを話した。
sn「――Aちゃんはさ、俺らの事どう思ってるん？」
"俺らの事"というのは、きっと幹部の事だろう。
『嫌いじゃない。私の事大切にしてくれてるって思うし、まあ…乱暴な時もあるけど、気遣ってくれて、居場所もくれて』
sn「うん、そうやね」
じゃあ、と付け足すように続ける。
雑面の下の瞳は、一瞬しか見えなかったがダイヤモンドのような透き通った色をしていた。
sn「自分の事はどう思っとん？」
私の事。きっとペ神は、私の事を見極めているのだろう。
また、魔法を使っているのだろうか。
『私は、私が大嫌い。小さい頃から守られて生きてきたから、何もできない。何処に行っても役に立てずに居るだけで迷惑をかけてしまった。無駄に運動はできるし、勉強も得意。言われさえすれば何でもする。そういう風に育てられてきた。年の離れた人の相手だって、話の噛み合わない人と話すのも苦じゃない』
sn「何でもできる子って言われとった？」
『…そう。でも、いざ突き放されて、何もできなくなった。これをしろって言われたらできるのに、自分で決めて行動するのは得意じゃなかった』
だから、私は私が大嫌いだ。
sn「ん〜、そうか〜」
彼は納得したように何度か頷いて此方に向き直った。
sn「じゃあこれからよろしくね！」
『…え、私逃げる予定だけど』
sn「一人じゃ行動できんねやろ」
『これからできるようになるの！』
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作者名：中澤 錦 | 作成日時：2019年9月7日 18時
