嵐のよう ページ29
『で、傍にいるってどうすれば…？』
ut「常に一緒におってくれればええよ」
『難しい事言うなあ…』
tn「基本は俺もって言うたけど、おれんかもなあ。俺ら結構別行動するしな」
gr「そうだな。まあ大丈夫だろ」
この男は何を根拠に言ってやがんだ。
まあ、私が自衛できればいいから頑張ろう。
『分かった。当面は足を治すことに専念するよ』
gr「ああ。治したら俺の所に来い」
『どうやって？』
tn「ほい、これロボロから」
トントンから渡されたのは金色の大きめのカフ。
これを、付ければ良いのだろうか。
『ん…付けにくい…』
zm「俺が付けたるわ」
『お、ありがと』
gr「うむ、中々似合っているじゃあないか」
『…で、これどうすんの？』
耳のカフを触りながら、トントンにそう聞く。
tn「それ、インカムやねん。超小型の」
『……はあ！？凄すぎでしょ！！』
tn「裏にちっさいボタンあるやろ？それ押しながら繋ぎたい人の名前言えば通信できんねん」
『はえー…凄い』
ut「ロボロ中心に開発班が作ってん」
gr「それでいつでも連絡できるからな」
『ん、分かった』
――それにどんな意図があったとしても、誰かに物を貰うのは嬉しい。インカムに何度も触れ、頬が緩むのを抑えきれない。
zm「えかったな」
『うん。ゾム、付けてくれてありがと』
zm「そ、それくらい、ええよ！」
tn「お前等仲良えな」
zm「せやろ？」
『んふふ』
私が座るベッドは、皆とは違う世界だ。速く治して、帰りたいな。元はと言えば私が身勝手だからだけど…。
『こんな高そうな物、貰っても良いの？』
gr「良いんだ。気にするな」
tn「せやで、俺らからのプレゼントや」
『ん、ありがとう』
医務室のペ神が座る椅子の横には鏡がある。少し見たい気持ちもあるが、足が痛くて歩けないので仕方がない。
ut「じゃあ俺ら戻るけどあんま無理せんといてな」
gr「早く治すんだゾ！」
tn「ゾムは速く書類出せこら」
zm「あ、そうやった！すまん俺も行くわ！」
『うん、皆ありがとう』
バタンと扉の閉まる音が響き、静まり返る。
さっきまで、あんなに賑やかだったのになぁ。辺りを見回すと、近くの本棚に入っている本に目が行く。何もできない間、本を読むのも良いかもしれない。
『なになに…"友達の作り方"、"ポジティブ思考になりたい人へ"、"騙されない方法"……誰だよ本選んでるの』
内容が偏りすぎている。本を読むのが大好きって訳じゃないから軽い物を読みたかったが、仕方ないと思い分厚い物に目をやる。
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作者名：中澤 錦 | 作成日時：2019年9月7日 18時
