鍵は足の怪我。 ページ25
『嫌だ。離して、離して！』
トントンが掴む自分の腕を見て、記憶がフラッシュバックする。
私がまだ、小さかった時。まだ、家族がいた時。
〔お前は、ここに隠れてなさい〕
――どうして？お客さん、私もお話したい。
〔ダメよ。お客さんは、貴女に会いたがってはいないわ〕
――どうして？
〔おいっ、子供を隠しているだろォ！？速く出せ！！〕
――おかーさん？おとーさん？
〔A……っ〕
〔逃げて！〕
tn「………もう、終わりやで。俺らの勝ちや」
『や、やめて……っ』
chi「何かおかしくない？大丈夫なん？」
『ひ……ぁ、こ、っち来ないで……！！』
――？どうしたの？ねえ………
〔やっぱりいるじゃねえか！！あの野郎、嘘つきやがって……〕
――誰？おとーさんとおかーさんは？
zm「なあ、A、大丈夫なん？」
『ぃや、ぅ』
tn「おいっ、大丈夫か！？」
〔ちょ、逃げんなって！〕
――い、痛い！ひ、あ、足が……。
〔Aって言うのか？名前なんていらねえな、どうせ……〕
――やだっ、何……っ痛い！やめて！！
〔まだ小さいが、綺麗な体してんじゃねーの。これはすぐに買い手がつくな…〕
『痛、い……！やめて……怖い…っ、やだ……ぁ』
〔………売りに出す前に、ちょっとくらいいいよな…〕
――な、に……？や、やだ……やだ、やだやだ！！！！
『や、め………っ』
私は意識を手放した。
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トントンside
チーノとゾムから逃げている小さな彼女を見つけた。気配を消して、前に立つと、何とも容易くぶつかってくれた。すぐに横へ行こうとするものだから、腕を掴んで逃げれんようにした。
でもまさか、気絶するなんて思ってなかったんや。言葉を次々に吐いて、涙を流して、彼女は、眠ってしまった。
その寝顔が、吐息が。全てが美しいと思った。
chi「トントン？」
tn「っ、ああ、すまん。連れて帰るわ」
zm「……俺が捕まえたかったんやけどなぁ」
tn「こうなったらしゃあないわ。俺が運ぶからチーノ連絡頼むわ」
chi「了解」
自分の腕の中で眠る少女は、どんな思いで暮らしていたのだろう。先程のように思い出すと辛い過去があるのなら、何を支えにあんなに強く生きていたのだろう。
その強さが、弱さが、愛おしく、繊細でまた美しい。彼女がしてきた努力は、報われているのだろうか？
そんな風に疑問と言葉が頭を駆け巡る。
インカムから聞こえてくる沢山の声は、その思考を邪魔するだけで。
tn「……………ほんま、喧し…」
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作者名：中澤 錦 | 作成日時：2019年9月7日 18時
