ムラカミさんの思惑 ページ7
shingo said
.
何杯目かのショットグラスを煽る彼女、マリ。
昔のオトモダチ。
「もう、感謝してよね」
「嗚呼、マリ…ほんまに今回は感謝してる」
背中が大きく開いた
身体に纏わり付く様な黒いドレス
明るいブラウンのにウェーブのかかった髪を
彼女は色気を振りまきながら掻き上げる。
「あの人、山本ってやつ本当ちょろくってさ。
ちょっと、触るだけでグラッときちゃって。」
「ほんま、助かったわ。おかげでやっと手に入れられた。」
目の前のグラスに入った
琥珀色の液体を一度に飲み干せば
熱い塊は食堂を通り胃の中へ消えていく
「ほな、これで。くれぐれもこの話は墓まで持ってってくれよ。…お前も幸せになれや。」
席を立ち厚い白い封筒を
彼女の座るカウンターへと置く。
いや、口止め料ってやつか。
.
俺はずっとAを見てきた。
一度、彼女が独身だった頃
ここに居る姿を見てから
彼女のことを調べあげ、
偶然を装い隣の部屋に越し
近づくタイミングを伺いやっと手にいれた。
知らんかったやろ？
あの旦那も策略やで？
偶然を仕向けて彼奴を近づけさせてAと結婚させた。
少し経って、
Aがいちばん幸せを感じている頃
マリを近づけて、マリに靡くように仕向けた。
だって、一度裏切られたら
次惹かれた相手には縋り付いて依存して
離れられへんやろ？
Aが、ゴミ出しのとき俺のこと見てるんはなんとなく気づいてて
いつも胸のとこが緩い服着とったり、
生足晒しとって
俺に気があるのは一目瞭然やった。
少し頭悪い子で残念やったけど。
惹かれあって結婚したと思ってる２人には
俺が仕向けたことは内緒にしておこう。
これは一生、彼女に言うことのない秘密。
.
帰宅し待つ愛しい彼女の背中に腕を回す。
もう離さへん。
A、お前は蝶や。
可憐で美しく、己が1番賢いと思っているような女。
そんな女が俺の手の中で転がされて、
俺の手の中から逃げられへんように
自分から向かってくるんは
見ててほんま可愛らしな…？
これからも、馬鹿で可愛らしいAを
愛してるよ。
誰よりも、何よりもずっと。
俺の手の中でずっと生きてったらええよ。
絶対に、幸せにしたるから…な？
.
fin .
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：涕 | 作成日時：2017年7月21日 19時
