なんでこんな奴【T.N】 (ページ22)

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夏休みの終わり。

それは俺らの引退を告げてる。

この試合が終わればもうこのメンバーでコートに立つことはなくなる。

最後の試合は阿部に来て欲しかったのにあんな別れ方した気まづいに決まってるやん。

あれから1ヶ月経ったけど阿部とはLINEも繋がってないし連絡はもちろん取ってない。

絶対来てくれへん。

最後の試合やしみんなめっちゃ気合い入ってて、俺も頑張らなって。

阿部のことは頭から消すことにした。

やのになんで、普通の顔して来てんの？

こっちを頑なに見ようとせん阿部の目が俺の足を急かす。

来てくれた。

よかった。

最後の試合、見てもらえるんや。

嬉しいって気持ちと、なんで来たんかっていう疑問が入り交じって複雑な気分。

あの相手校の仲良い女子見に来たにしても、阿部やで？

今までの言動とか思い出したら分かる。

ホンマに嫌やったら来んはずや。

アップを済まして一試合目。

負けたら終わりのこの大会やけど、運悪く当たったのはまあまあ強いところで。

このチームになってからの1年間で結構戦った気がする。

それでも勝ったのは2回。

阿部の前で負けるわけにはいかへん。

そう思うけどやっぱり相手は強い。

「トラップしっかり！」

キャプテンとして声はかけるけど、俺だって必死でそんなに周りが見えてない。

こっちのミスばっか目立ってろくな試合ができてなかった。

まだ点を入れられてないのがホンマに不思議。

.「そこトライやろ！」

他の奴らも声は掛けてるけどその声もだんだん荒くなってってる。

いい声じゃない。

もうハーフタイムに声掛けるしかないわ。

今こいつらに色々言っても逆効果。

そう諦めたとき、向こうのベンチから歓声が聞こえた。

いつの間にかボールは俺らのゴールの中。

1点、取られた。

「ドンマイドンマイ切り替えよー」

取り返すしかない。

FW*からボールをもらって、ゴールまで誰にもボールに触れさせることなく走った。

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FW...ポジション。攻め。