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俺の足音には気づいてたはずやのに、全くこっち向かへんねんもん。
もう周りに人はほとんどおらんくて、ここはまるで俺と阿部の世界。
「追いかけてこんでいいですよ。
好きな人いるのにほかの女子に構うって、言い方悪いですけど遊び人みたいですね。」
振り返りもせずそう言われて俺の中で何かが切れた。
「阿部、こんなとこで言うのもなんやけど、」
無理矢理こっちを向かせて息を整える。
「俺の好きな人、阿部やで?」
「...は?」
"は?"
その1音で雰囲気なんか崩れたけど、恥ずかしさも消えた。
「2年のときに俺らサッカー部で丹川見るためにテニスコート行ってん。
そこで、阿部に一目惚れして、あの、そっからずっと好きで、阿部がジャニーズ好きって分かって大西さんって人に焼きもち焼いた。
それで、やっと喋れたときも好きな人の話とかして勝手にショック受けて俺好きな人おるって言って勘違いされて。
なんか、ホンマに上手く言えへんけどずっと好き、でした。」
阿部は下向いて俺の言葉を聞いてくれてたけど反応がなくて怖くなる。
「目、大丈夫ですか?」
「め?」
「いや、丹川ちゃん見に行って私に一目惚れはおかしいと思いますよ?
さすがに無理がある。
罰ゲームかなんかで告れって言われたなら協力するんでホンマのこと言ってください。
イケメンやからって、私が西村さんのこと好きになったら面白がりたいんですか?」
遠くでは花火の音が聞こえる。
当然ながらこんな人のおらんとこじゃ花火なんか見えへんくて、これが現実かって思った。
「違う。
ホンマやから。
信じて。」
「信じません。
そう言って私が信じたところを笑うんですよね。
どこからが嘘ですか?
好きな人いるってのも嘘ですか?」
「ホンマに嘘じゃないから。
どうしたら信じてくれる?」
「信じません。
信じるか信じないかの賭けとかしてるなら協力するんでもうやめてください。」
これ、いくら言っても無駄やわ。
まさかこうなるとは思わんかった。
「俺がホンマに阿部のこと好きって証明する。
卒業までに絶対。
今日はもう、友達と合流し。
俺も一緒に来たやつらに連絡するから。」
「...はい。」
花火見に来たはずやのにこんなことになって、阿部にとっては最悪な1日やったと思う。
ごめん。
そんな言葉を心の中で伝えたけど阿部に響くわけもなく、阿部の後ろ姿を見つめた。
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このは(プロフ) - 毎回楽しみにしています!頑張ってください! (2019年1月24日 21時) (レス) id: 8887fe933b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ありな。 | 作成日時:2018年12月16日 19時