連絡先 ページ10
『いった……』
ズキズキと痛む頭。見慣れない天井。
まずい。やらかしたかもしれない。
恐る恐る隣を見れば、案の定、昨日退勤後、一緒にご飯を食べたお客さんの姿があった。ああ、やっぱり。
昨日、送っていくって言われて、途中にあった居酒屋に入ってそれで。それで……。その後、どうしたっけ。全くもって記憶がない。そしてこの痛む頭。もしかしたらかなりお酒を飲んでしまったのかもしれない。
「ん、起きたか」
『え、あの、甚爾さ、』
「手は出してねぇから安心しな」
そう言って私の頭を撫でる彼の手付きはいつにもまして優しかった。よかった、そう言う感情が思い浮かばなきゃいけない、そのはずなのに。私の心のなかはそうとはいかなかった。
「なに、手ぇだした方がよかったか?」
思っていたことをそのまま口にされて、思わずすごい勢いで首を横に振ってしまった。たぶん、顔は赤かった。
『甚爾さん、この事、誰にも言わないでください』
ベッドから降りて頭を下げる。少しの沈黙の後、彼の大きな手が私の頬を包んだ。
「誰にも言わねぇからさ、連絡先、教えて」
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作者名:かうみ | 作成日時:2024年1月13日 18時