教えてやろうか ページ4
Aside
開店前のお店に客を入れたことをオーナーには怒られた。先輩には誰なのと問い詰められたし、甚爾さんはどうしてあんなところにいたのか、気になったけれど聞かないと言ってしまった限り聞くわけにもいかなかった。
「梅酒ロック」
そう言って目の前の席に座ったのは先程雨に濡れていた甚爾さん。お礼をしに来るとか言っていたのは冗談だと思っていたから正直驚いた。しかも、当日に来るなんて思わなかった。
「お前も、飲むだろ?」
『んと、じゃあオレンジジュースで』
「なんだ、酒飲めねぇのか」
こんな仕事をしておきながら、とは自分でも思うが飲めないのだから仕方がない。去年から年齢的に飲めるようになったはいいものの、飲み方がいまいちよくわからなくてあまり得意ではない。
『上手な飲み方、わかんなくて』
なんなら、貴方に教えてほしいです。なんて思いながらも、お客さんにそんなことは言えるわけがなくて。
「じゃあ、俺が教えてやろうか」
そう言いながらカウンターにおいていた手に彼の指が絡まる。おさわり禁止です、だなんて断れるような雰囲気ではなかった。いや、断りたくなかったというのが正解なのかもしれない。思えば、この時から私は彼に惚れていたんだろう。
『何をですか』
「酒の飲み方」
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作者名:かうみ | 作成日時:2024年1月13日 18時