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今夜だけでいいから ページ25
「おお、どうした」
一度、チャイムを鳴らすと甚爾さんが顔を出した。泣き崩れた顔の私を一目見て、驚いたような顔をしていた。
「まあ……とりあえず上がんな」
私の頭を撫でる大きな手。手の大きさとか、そういうのはあいつと同じようなものなのに、甚爾さんのそれは何か違う。
「飲む?」
差し出されたのはいつもより度数が高め――といっても一般的に考えれば低いほうだが――のお酒だった。いったい、この人の家にはどれだけのストックがあるのだろう。
プルタブを引くと、音を立てて缶が開く。一回で缶の半分くらいの量を飲み干してしまった。いつになく、お酒がすすむのはあいつのせいだろうか。
お酒の力も借りて、甚爾さんにさっきあったことを話した。やっぱり、引っ越した方がいい、そういう結論に至った。暫くは甚爾さんの家に厄介になることにした。
『甚爾さん、お願い。今日だけ、今夜だけでいいから。抱いてくれませんか?』
返事の代わりに唇が触れた。触れられたところが熱くなる。
窓の外にはクリスマスの足音が響いていた。
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作者名:かうみ | 作成日時:2024年1月13日 18時