お酒の飲み方【禪院甚爾】 (ページ23)

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愛という言葉をページ23

｢あ、そうだこれ｣

手ぇ出して、そう言われて手を出すとそこに置かれたのはかわいらしい柄のついたキーケース。

『これって……』

｢合鍵。困ったらいつでも来い｣

それはきっと、元カレのことを言っているんだろう。私のどこがよくて執着しているのかはわからないけれど、家もバレてしまったし、結構な頻度で甚爾さんにお世話にならざるを得ないかもしれない。

『ありがとうございます』

そう言って私は机の上の缶チューハイを飲み干した。お風呂に入ってくる、その言葉と同時に、私は部屋にひとり残された。

本当に最低限、そんな生活が見えるようなこの部屋で、甚爾さんはどんな生活をしているのだろうか。春過ぎくらいからの付き合いだが、私は甚爾さんのことを何も知らない。誕生日がいつだとか、どんな仕事をしているのかとか、過去の事だとか。

いや、知ったところでどうにもならないか。甚爾さんの家(ここ)まで来てしまったものの、私は甚爾さんの彼女でもなんでもない。ただの風俗嬢で、仕事の関係。

いや、でもきっとこの感情はそんな生ぬるいものではないな。なんて言うんだろう。これは。

この感情を言語化できないから、愛という言葉を使うことにした。