帰りたくない ページ22
『今日、帰りたくないんです』
こんなことを言ったって、甚爾さんを困らせてしまうだけだ、なんて事わかってる。でも、どうしてもあいつが待ち伏せているかもしれない家に帰りたくない。
「は?」
ほら、やっぱり。困ったような、呆れたような顔をしている。目の前にあるお酒を飲み干して、最近のことを話した。元カレに居場所を特定されたこと、自宅付近で待ち伏せているかもしれないこと。
「じゃあ、俺ん家来る?」
『甚爾さん、家ないんじゃ……』
「いや、あー……借りた。」
この間まで、家がないだの何だの言ってたはずなのに。いつの間に、家を借りたんだろう。
『え、いいんですか?』
いいんですか?と聞いたはいいものの、私は家に泊めていたんだし、一日くらい私が泊まったとて問題はないだろう。
「ああ、構わねぇよ」
店を後にして、甚爾さんの後ろを続いた。駅前のタクシー乗り場でタクシーを拾って行き先を告げている。
暫く道を走った先にあったアパートの角部屋が甚爾さんが借りている家らしい。ひとりで暮らすには十分な広さで、リビングには机と、テレビと、生活に最低限必要なものだけが置いてあった。
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作者名:かうみ | 作成日時:2024年1月13日 18時