貴方だから ページ20
『たまにでよければ、うちに泊めましょうか?』
アフターで来た居酒屋で、向かいに座った甚爾さんにそう言った。少し酔ってる、そんな感覚はするけれど、お酒の勢いを借りでもしないとこんなことは言えない。
「あんま自分の事安売りすんじゃねぇよ」
思ってもいなかった返答が返ってきた。じゃあそうしようかな、みたいな展開を期待していたといえばそうだ。だめなんだろうけど、私はこの人にだいぶ惚れている。
『誰にでも言ってる訳じゃないです。甚爾さんだから言ってるの』
やばい、酔ってる。普段なら言わないこんな台詞も、いとも簡単に口から出てしまう。
「へぇ……?そんならいいや。案内しろよ」
そそくさと会計を済ませた甚爾さんは、私の手を引いて駅に早足で向かった。最寄りの駅まで15分ほど電車に揺られて、実家に用意された家に彼をあげる。
道中のコンビニで買ってきたお酒を隣にならんで飲んだ。甚爾さんが座っている、右側が熱い。
「顔、赤いな」
そう言って、頬に手がのびる。少し冷たい彼の手が私の顔の熱を吸い取っていく。
流れるように、唇が重なった。
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作者名:かうみ | 作成日時:2024年1月13日 18時