お酒の飲み方【禪院甚爾】 (ページ19)

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空のグラスページ19

『……って時雨さんが。』

数日前、聞いたことを全て話してしまった。これが本当なのかどうなのか、甚爾さんの反応を伺う。目の前のグラスのカクテルも、空になっていた。

｢あー……住む家ねぇのは本当｣

聞けば、公園で寝泊まりをしているらしい。カプセルホテルとかそういう類いのに泊まるにはお金がないとか言ってた。そんなことするくらいなら私にお金使わなくていいのに。いや、だめか。私たちの関係はたかが知れている。甚爾さんがお店に通わなくなったら終わってしまう。

繋ぎ止めておきたい、そう思ってしまうのは初めての事だった。

｢Aさん、すみません。ご指名です｣

言われた先を見れば、いわゆる太客と呼ばれるべきであろうお客さんが座っていた。

『今日この後どうですか？』

少しの時間で席をはずしてしまう事への罪悪感と、それとあと、少しの期待を込めて誘う。

｢ああ、待ってる｣

そう言うと甚爾さんはグラスに入ったお酒を飲み干して、席を立った。