度数3% ページ16
花火の音が鳴り響き始めた。石階段の上に2人でならんで座る。肩と肩が触れそうな距離に、心臓が高鳴っているのを感じる。
「足、靴擦れしてんだろ」
私の足を取ってさっきのビニールに入っていた絆創膏の箱を取り出した。壊れ物を扱うように私にさわるその手付きに、やっぱり特別なんじゃないかなんて、くだらない期待をしてしまう。所詮、私は少し気に入られた店員でしかないのに。
『あの、自分でできます』
そんな声も無視して、彼の手は動き続ける。お酒を飲んだときと同じように、触れられた部分が熱い。
それをし終えた彼は再び私のとなりに腰をおろした。ビニールの中に入っていた缶チューハイを取り出して開けた。花火と花火の合間に、缶の開く音が響いた。
「飲む?」
かわいらしい絵が描かれた、度数3%の缶が差し出された。恐る恐る口に運ぶと、果物の味が口いっぱいに広がった。
『ん、おいしい』
隣を見ると、満足そうな顔をした甚爾さんがいた。ひとくち、ふたくちと缶を口元に運ぶ。缶の中身が軽くなっていく。あ、お金。払わなくちゃ。
『甚爾さん、お金……』
カラン。残りの少なかったお酒の缶が私の手を滑り落ち、階段を転がって、中身がこぼれた。
気づけば、私と甚爾さんの影は重なっていた。
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作者名:かうみ | 作成日時:2024年1月13日 18時