期待しちゃうから ページ15
『いや、だから連れがいるんですって。何回言ったらわかるんですか』
酔ってるらしい、その上に祭りの雰囲気に当てられてこんな私をナンパしようとしてるんだろう。遊ぼうよ、とか俺たちと回ろうよ、とか言ってる。暗闇でもわかる。顔が赤い。店にいる厄介な客と同じような感じだ。
「誰の連れに声かけてんだよ」
暗闇の向こう側から聞こえたは他の誰でもない、甚爾さんの声。
「悪い、A」
持っていたコンビニのビニール袋を私に預け、2人の男を引きずってまた暗闇のなかに去っていった。渡されたビニールの中には、絆創膏とお酒の缶が2本。アルコールの強いものと、弱いもの。
『甚爾さ、』
再度暗闇から現れた彼に駆け寄ると、夏のそれとは違う、暖かさに包まれた。あまりに突然の事で、それが甚爾さんに抱き締められているのだと気づくのに時間がかかってしまった。それを自覚したとたん、身体中の血が騒ぎ出すような、熱くなる感覚に襲われた。
『花火、始まっちゃいますよ?』
私がそう言うと、そうだな、なんて言って腕の力を緩めた。別にあの程度のナンパ、お店の厄介な客と比べればなんて事ないのに。甚爾さんはたまに私を、普通の女の子のような扱い方をするから期待してしまう。
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作者名:かうみ | 作成日時:2024年1月13日 18時