祭り ページ14
楽しみな日というのは早くやってくるもので、今日はもう約束の日だった。
慣れない浴衣を着て、下駄をはく。結局、慎重が同じくらいの友達に浴衣は借りた。きれいな花柄の、黒い浴衣。髪の毛をセットして、自分で気付けをした。
待ち合わせの時間よりも早く着いて、人混みの中の甚爾さんを探す。背が高いし、目立つからすぐに見つかると思うのだけれど。
「A」
名前を呼ばれて振り替えると、甚爾さんの姿があった。私の頭から爪先までを視線が往復した後、彼は私の手を取った。もしかして、気合い入りすぎだったかな。私よりだいぶ大きな手が、夏の湿り気と共に私の手を包む。人とすれ違う度に肩が触れて、屋台に向かうにも時間がかかった。
一周するのにもかなり時間を要して、もうすぐ花火が始まろうかという時だった。私たちの手には焼きそばと、りんご飴と、ヨーヨー。あと、甚爾さんが取ってくれた射的の景品だったぬいぐるみ。
驚くべきスピードで私がほしいと言った物を打ち落としていた。どこでそんな銃の扱いがうまくなったんだろうか。
「ここで待ってろ」
そう言い残して私はひとり、神社の隅にある石階段の上に取り残された。足が痛い。慣れない下駄なんてはいたからだ。鼻緒が指の間に食い込むようになっていたから、赤く擦れている。下駄を脱いで、足をふらつかせていると、ひとりの人影が帰ってきた。
『甚爾さ……ん』
顔を上げると、そこにいたのは見知らぬ男性2人だった。
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作者名:かうみ | 作成日時:2024年1月13日 18時