出てって ページ2
甚爾side
「最っ低!信じらんないんだけど。出でって!」
何度目だろうか。女っていうのはわかんねぇもんだな。すぐに家にあげるくせに、最初は他の女と付き合っててもいいから、と言うくせに、最終的にはこう追い出してくる。まあでも今回は長く続いた方だが。俺は前妻が死んでから特定の家を持たず、そこら辺で会った女の家に転がり込む、いわゆるヒモ生活をしている。
ポケットにはさっき財布から抜いてきた諭吉が5人ほどと、この追い出される原因になった女の名刺。アスファルトには雨が打ちつけ始めていた。
立ち上がって歩きだしたはいいものの、向かう先が見当たらない。できるだけ早く、次の宿を見つけなければ。そんなことを思いながらも、公園のベンチに腰をおろしてしまう。
昔はよくこんな風に――いや、駄目だ。そんなことを思っても何にもならない。終わったんだ、あの生活は。
突然、雨が止んで、上を見上げると俺と空の間に1枚、ビニールを挟んだような視界が広がっていた。
『甚爾さん……?大丈夫ですか』
「あー……Aか」
自分がこの状況の元凶とは知らないAは、至極心配そうな顔をこちらに向けていた。
『風邪、引きますよ。ちょっと来てください』
そう言ってAは俺の手を引いた。
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作者名:かうみ | 作成日時:2024年1月13日 18時