7 昔の話 ページ7
私の母は寡黙な人だった。でも、 まれに聞く母の言葉には妙な説得力というか、強制力があった。
父はいなかった。私の母を身ごもらせた男、私の父にあたる人は他の女と一緒になったと聞いた。それを聞いたとき、自分が不自由だとかそういう理由じゃなくて、母を見捨てたことに心底腹が立った。
自由な暮らしではなかったけれど、少し年の離れた兄と3人で十分楽しく暮らしていた。
母が病に倒れるまでは。
私が多分、14歳の時、母は病気で床に伏すようになっていった。病院に行こうにも薬を買おうにも、お金が足りず、兄は一日中働き始めた。ごめんね、ごめんねと母は1日に何度も謝った。
数か月後、兄が家に帰らなくなった。
お金だけは送られてくるから、生きているのだろうけれど、住み込みで働ける場所を見つけた、という文面だけで納得すると思われているところが腹が立つ。私は15になっていた。
その翌月、母は更に体調を悪化させた。
医者にも、もう数日しか持たないだろうと言われ、兄に連絡をいれた。
「A、ごめんね。貴女はちゃんと、人に愛されて死になさい。」
数時間後、母は息を引き取った。
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飴(プロフ) - 頑張ってください (12月25日 23時) (レス) id: 5dbd17dea3 (このIDを非表示/違反報告)
かうみ(プロフ) - 飴さん» コメントありがとうございます!これからも読んでいただけたら嬉しいです! (12月25日 23時) (レス) id: d9b84374c8 (このIDを非表示/違反報告)
飴(プロフ) - 続きが、気になる! (12月25日 13時) (レス) @page11 id: 5dbd17dea3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かうみ | 作成日時:2023年12月15日 21時