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「Aはいるか」
準備をしていると、店の外から声がする。数日前、初めて私と出会った彼の声が。
『宿儺様』
急いで準備を終えて、表に出る。受け付けに立っていた店員の顔は酷くこわばっていた。きっと、私はそれに似つかないほどの笑顔をしていただろう。
『こちらへ』
前回と同じ、上客のみが通される部屋へ向かう。長い廊下に足音と周りの部屋からの話し声が聞こえる。
『お入りください』
同じ部屋、同じ場所に彼は腰を下ろした。側に座ると、彼の大きな手が腰に周り、いっそう近くに引き寄せられる。後ろから抱きつくような形で私の首に顔を埋める宿儺。首に生暖かい感触が走る。
「知らぬ匂いがする」
首に埋めていた顔を上げて、目を合わされる。まずいかもしれない。おそらく、前の客の匂いが残っていたんだろう。念入りに匂いを消したはずだったのだが、やはり王と呼ばれるだけあって色々な感覚が優れているんだろうか。
「A、貴様は俺の相手だけしていればいいんだ」
『嫉妬、というやつですか、宿儺様』
一瞬、少しだけ眉をひそめるような顔をした後、その顔はすぐに笑顔に変わった。
「ハッ、よく言う」
ひとしきり互いを求め合った後、宿儺の“仕事”を見に行く、という口約束を交わした。
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飴(プロフ) - 頑張ってください (12月25日 23時) (レス) id: 5dbd17dea3 (このIDを非表示/違反報告)
かうみ(プロフ) - 飴さん» コメントありがとうございます!これからも読んでいただけたら嬉しいです! (12月25日 23時) (レス) id: d9b84374c8 (このIDを非表示/違反報告)
飴(プロフ) - 続きが、気になる! (12月25日 13時) (レス) @page11 id: 5dbd17dea3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かうみ | 作成日時:2023年12月15日 21時