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『もう、お別れみたいです』
光に包まれていく身体を見つめながらそう呟く。この時を、1100年前から待ちわびていた。
はずだった。
悲しくないはずなのに、頬を暖かいものが伝う。
『なんで、泣いて……』
おかしいな、なんて笑ってみせても涙は止まりそうにない。
「さあな。俺はそれを知らん」
冷たく突き放しながらも、手で優しく涙を拭ってくれる。そんな手付きにもっと涙が溢れて、止まらなくて、宿儺様の胸に顔を埋めた。
『ねえ、宿儺様。もしも生まれ変わったらまた私を傍に置いてくれますか?』
生まれ変わり、なんてそんなもの信じていなかったけれど。もう二度と人間なんかになりたくはないと思っていたけれど。やっぱり、この人の隣にいたいという思いが勝ってしまう。
「ああ、もちろんだ。」
今までになく優しく笑う宿儺様から目がそらせない。だんだんと力が抜けていく。指先の感覚が、足の感覚が消えていく。
見つめあいながら、私たちは今世最後の口づけを交わした。
『愛しています』
声になったかならないか、それが耳に届いたかはわからないが、微かに、彼の口元が柔らかくなった、そんな気がした。
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かうみです。
今更ですが明けましておめでとうございます。いつの間にかたくさん評価いただいてて嬉しいです。あと一話で終わりになるのでお付き合いください。
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飴(プロフ) - 頑張ってください (12月25日 23時) (レス) id: 5dbd17dea3 (このIDを非表示/違反報告)
かうみ(プロフ) - 飴さん» コメントありがとうございます!これからも読んでいただけたら嬉しいです! (12月25日 23時) (レス) id: d9b84374c8 (このIDを非表示/違反報告)
飴(プロフ) - 続きが、気になる! (12月25日 13時) (レス) @page11 id: 5dbd17dea3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かうみ | 作成日時:2023年12月15日 21時