愛の言葉で息の根を【呪術廻戦】 (ページ2)

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およそ1000年前だっただろうか。いつもは明るくて騒がしいはずの花街はいつになく異様な雰囲気に包まれていた。年に数回、訪れる客のせいで。

彼は宿儺という名を名乗り、土地神、人災、呪いの王。人々の好きな名で呼ばれた。前回彼がこの町を訪れたとき、表に出ていた遊女は全員殺されたと聞いた。

それを聞いたとき、不謹慎だとは思えども、私の胸は弾んだ。ああ、これであの呪縛から解放される。次に来たときは、必ず、私が表に出させてもらおう。そう決心した。

『あの、私に出させてください。』

こそこそと誰を出すか、話をしていた経営者とでも言うべきお店の頭に声をかけた。驚いたような顔を向けられ、二つ返事で了承された。客が誰の時よりも、入念に身なりを整えられ、彼が見て歩くという通りに出される。

足音がして、土埃がたった。すぐさま、彼の到着が知らされる。一斉に頭を下げた周りに合わせるように1つ遅れて私も頭を下げた。自分を殺す相手の顔を一目見たいと思って、顔を上げた。ただ、好奇心にかられた。それだけ。

瞬間、視線が交差する。顔を上げる人がいるだなんて思っていなかったのだろう。驚いたような顔をしていた。

｢おい、貴様。名をなんと言う｣

『Aでございます』

上げていた頭を下げて、名を名乗る。途端、手が、顔に触れる。下げた頭を無理やり上げるように、頬を挟まれた。

｢そうだな、今日の相手はA、お前にしよう｣

月の明かりに照らされて、彼の笑顔がやけに綺麗に見えた。