運命の花を 阪神タイガース

逃げたんだ ページ35

A「じゃあ、そこに座ってください」


そう、椅子に座るように促した。


上本「お願いします」


そう言って前に出された先輩の腕は赤く擦りむいていた、


A「あー...。痛そうですね...」


上本「体育館の床に擦り付けちゃって...」


消毒液をつければ、少し強張る先輩。

あ、ちょっとかわいい...。なんて、思ったりもして。


上本「どうして、球技大会出ないんですか？」


A「え、」


上本「あっ！えっと...。その」


A「私...あんまり皆んなと協力して、みたいなの苦手なんですよね、だもんで、結構孤立したりすることもあるんですが...」


少し切ない顔をしたのが先輩に伝わったのか、


上本「俺は、そういうのいいと思うよ、とっても自分に嘘つかないで生きてて、無理に人に合わせることもないもんね」


なんて、笑顔を見せた先輩。

急に、私の顔が赤くなるのがわかった。


A「ありがとうございます...！」


上本「それに、俺に普通に接してくれてとっても嬉しかった」


ああ、心臓がうるさい。

早く、手当を終わらせて、先輩から離れよう。


A「終わりました」


上本「ありがとう、それに、今日は本当に助かった」


そう、また笑顔を見せるから、

本当に好きになりそうだった。

けど...。

保健室をノックする音が聞こえた。

「博紀くん、いるー？」

また、上本先輩のファンかな、と思ったけど、
予想は外れた。

上本先輩の顔が明らかに違くて、


A「彼女さんですか？」


上本「う、うん」


照れた表情を見せる先輩。

鍵を開ければ、そこにはとっても綺麗な女の人。

「あっ！いた！心配したんだよ？大丈夫？」


上本「うん、大丈夫、ありがとう」


もう、居てもいられなくなって。


A「じゃあ、私、もう行きますね」


逃げるようにその場から出て行った。


上本「あっ！待って！！名前をっ！」


届いていた声に振り向くことはできなかった。

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