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「おにーさん方、何かお困りでっか?」
まさか話し掛けられるとは思っていないので
俺は口が開いたままだった
その男は微笑みをたたえていた
どこからか、この人なら聞いても大丈夫そうだなという俺の第六感がはたらいた
「…あの、ここら辺で美味しい酒屋知ってますか?」
俺の第六感が信用出来ないのは周知の事実だったので
片桐が慎重に、探るように聞く
なんせ、吉原の花魁二人の身に何かあっては困るから。
…怪しいとは思えないけれど
彼は朗らかに笑い、「えぇ、もちろん。俺も酒問屋なので」と答えた
それと、「お口に合うか、知りませんけど俺の店 来ます?」とも言った
それを聞くと片桐は俺に視線を向けた
……俺が決めろってか。どうなっても知らないけど
『お邪魔しても宜しいですか…?』
あくまでも下に回って丁寧に。
俺なりの人間関係を円滑にする付き合い方だ。
俺の放った言葉に彼は「勿論!」と答えて
俺達を案内し始めた
付いていきながら彼と話す
話している時も笑顔が絶えない人だ
名前は山口 忠
忠、と呼ぶことになった
よく笑う人に悪い人はいないと俺は思っている
…俺の持論だけれども。
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作者名:日紫喜 | 作成日時:2018年8月30日 14時