※祝言 ページ27
◇◇
そして、Aに求婚して数ヶ月。
「この度は、ご結婚おめでとうございます」
そうにこやかに挨拶するのは、袴を着た千寿郎。
俺とAが是非、千寿郎に祝辞をやって欲しいと頼んだのだが、千寿郎はそれからずっと毎日読む練習をしていた。
そんな練習の成果からか、ハキハキと話す千寿郎を可愛く思いながら、俺は隣で上品な笑みを浮かべるAを眺める。
想像していたより何倍も綺麗なAの白無垢姿。
真っ白な服や肌と相まって、真っ赤な唇が映える。
少し前なら叶うはずもなかったその光景に、俺は怖くなる程、幸せが満たされる。
「…そんなに見つめられると、恥ずかしいのですが」
そう言いながら、チラッと俺の方を見て頬を染めるAに、俺はまた心臓が苦しくなった。
「…A」
「なんですか、杏寿郎さん」
珍しく小さなお声ですねと、揶揄うように笑みを零すAは、俺に向かってどうしたのか聞いてくる。
「俺は、必ず君を幸せにすると誓う」
そんな真面目な俺の言葉に、驚いたように目を見開くAは、泣きそうな声で俺の名を呼ぶ。
「…私はもう、十分幸せよ」
その後も、街を上げて盛大に行われた俺たちの結婚式は、遅い時間まで盛り上がった。
◇
「お風呂頂きました」
襖を開けて入ってきたAは、長い髪を拭きながら布団の上に座る。
くっつけられた目の前のふたつの布団は、恐らく千寿郎が気を回したのだろう。
「…」
俺に向かい合うように正座しているAは、膝の上で拳を握りしめている。
「初夜だからといって、別に緊張する必要は無い」
「っ、」
硬い表情のAを心配しながら、スルッと頬を撫でてそう話すと、Aはビクッと反応する。
その反応が可愛らしくて、今日は手を出すつもりなんてなかったのに、俺は自然とキスをしてしまう。
Aの頬に優しく手を添えながら、少し離れてその可愛らしい顔を見つめていれば 、Aは照れくさそうに目を伏せながら、今度は自分から距離を詰めてくる。
それを合図にどちらともなく体を密着させ、俺たちは何度も角度を変えてお互いを求め合った。
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年10月31日 13時