再会 ページ16
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「助けてくださり、ありがとうございます」
昔は何でもかんでも口に出して、俺のことだって呼び捨てにしていたAは、彼女の母や女学校の先生たちの成果か、完璧な淑女へと成長していた。
「友達を逃がして自分が食われそうになるなんて」
素晴らしい自己犠牲の精神だとわざとらしく笑う宇髄に、Aは少し口元に笑顔を浮かべる。
「鬼の存在は昔から知っておりました」
そしてもちろん、鬼狩り様達が来てくれるということもと凛とした声で話す。
「…しかし、やはり目の前にすると怖いものですね」
フッと力が抜けて倒れそうになるのを、俺はすかさず受け止めて、Aを抱き上げる。
「御二方が来て安心したせいか、
力が抜けてしまいました」
そう力なく笑うAに、俺は胸の音はまた早くなった。
Aを気に入ったらしい宇髄は、昔と雰囲気の違うAにまごつく俺と違って、積極的に話しかける。
「俺は宇髄天元。よろしくなA」
「宇髄様ですね」
そう互いに自己紹介をする2人の間に、余裕のない俺は急いで割り込み、宇髄にAとは古い仲であることを伝え、この後は俺に任せるように言う。
「…ふーん?
じゃあ俺はさっきの子ら探してくるから、
そっちは頼むわ」
「うむ!承知した!」
◇
「お久しぶりですね、煉獄様」
「ああ!そうだな!」
隣をゆったりと歩くAに合わせ、俺達は歩きながら会話する。
「そういえば、瑠火さんはお元気ですか?」
槇寿郎さんや千寿郎にも会いたいわと、可愛らしく笑を零しながら歩くAに俺は足を止める。
「…?」
返事がないことに気がついて俺を振り返ったAは、心配そうに近づいてきて手を伸ばしてくる。
「一体どう「亡くなった」
被せるようにそう答える俺に対して、今なんとおっしゃいましたか…?と、不安そうな顔で聞き返してくるAの瞳は、ゆらゆらと揺れている。
「母上は、3年前病気で亡くなられた」
「は、」
俺はAにどんな顔を向けてやればいいのか分からず、俯いた。
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年10月31日 13時