無限列車 ページ1
◇◇
上弦の三との戦いの末、左目は潰れ、肋も砕け、内蔵も傷ついた。
俺の体には鬼の手が貫通しており、もう死が間近であることを悟る。
「こっちにおいで」
俺は、俺の代わりのように鬼に向かって泣き叫ぶ竈門少年を近くにこさせ、列車の中で話していたヒノカミ神楽について思い出したことを伝える。
「…煉、煉獄さん
もういいですから、呼吸で止血してください…」
呼吸はいくら使い道が多いと言っても、万能ではない。
傷を塞ぐ方法を尋ねてくる竈門少年に、もう俺はまもなく死ぬであろうと正直に話す。
「喋れるうちに喋ってしまうから、聞いてくれ」
そう前置きをしてから、千寿郎と父上への伝言を頼んだ後、俺は今も台所で待ってくれているであろう彼女のことを思い浮かべる。
恐らく彼女のことだから、いつも通り朝早くから起きて、任務終わりの俺のために、さつまいもを使った料理をたくさん作って待ってくれているだろう。
「…妻には、そうだな
…できるだけ。ゆっくりと。
俺の後を追ってくるようにと」
「へ…」
俺が結婚していたことに驚いたのか、それとも伝言の内容に驚いたのか、竈門少年は目から大粒の涙を流してポカンとしている。
「…」
彼女には伝えたいことが沢山ある。
けど、やはり一番は宝探しなんてものは辞めて、他の人と幸せになって欲しい。
そんな溢れ出る感情を抑えるように、俺は列車の中での出来事を思い出す。
柱合会議で証明された人を食わない鬼。
御館様がお認めになっているのだからと、特に気にも止めていなかったが、俺は列車の中で驚きの光景を目にした。
「命を懸けて鬼と戦い、人を守るものは、
誰がなんと言おうと鬼殺隊だ。」
あの少女が、汽車の中で血を流しながら人を守る姿。
まさか、人を守り
鬼と戦おうとする鬼がいようとは…
かつて、鬼との共存を望んでいた彼女に教えたら、どんな顔をしたのだろうか。
きっと、あの少女のことも妹のように扱いに違いない
そんな安らぐ気持ちと反対に、鬼の手の支えがなくなって、腹を血がじわじわと侵食し出す。
「胸を張って生きろ」
竈門少年に言いたいことを全て言った後、俺は黄色い少年や猪頭少年も合わせた、3人に向けて言葉を発する。
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年10月31日 13時