始動 ページ10
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「まず手掛かりを探さなくては」
炭治郎くんにも話した、杏寿郎との宝探しを始める決意を固めた私は、早速動きやすい着物に着替えて玄関に立つ。
彼が隠しそうな場所だけど、杏寿郎のことだ、簡単に見つけさせてはくれまい。
しかし闇雲に探すよりは良いかと、広い屋敷の中を端から端まで、掃除と同時進行で探し始めた。
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「…全然見つからない」
朝から探し始めたというのに、既に夕刻。
私は探すのをやめて、少し冷たくなっているであろう洗濯を取り込みにいった。
◇
昨日、あれほど家の中を探したのだ。
杏寿郎のことだから、もしかしたら店先に隠しているかもしれないと街へ出る。
「あら、炭治郎くん」
数週間前に見たばかりの赤みがかった髪の少年に、任務帰りかしらと私は笑って近づく。
「Aさん!」
そうにこやかに笑う炭治郎くんは、私を見つけると急いで駆け寄って来てくれる。
「あっ!そうだ!
もしこの後用事がなければ蝶屋敷に行きませんか?」
「…お誘い嬉しいけれど、
急に行ったら、しのぶちゃんに迷惑じゃない?」
蝶屋敷には色々とお世話になっていた私は、友人であるその子の名前を呟くと、炭治郎くんはそれなら大丈夫ですと、嬉しそうに私の手を引く。
「しのぶさんにAさんの話をした時、
会いたいと仰っていましたから!」
そう楽しそうに話す炭治郎くんを静止し、私は街で蝶屋敷の皆に手土産を買う。
そして再度、炭治郎くんと歩き始めた。
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「そういえば、Aさんはどうして街まで?」
「宝探しですよ」
私のその応えに、以前言っていたものですね…と、少し悲しそうな顔をする炭治郎くんに、私は声を出して笑う。
「この世に彼の存在を感じられるだけで、
嬉しいものなのよ」
◇
蝶屋敷に着くと、炭治郎くんに引かれてある部屋に連れていかれる。
失礼しますと礼儀正しく挨拶して扉を開く炭治郎くんの先には、久々に見る紫がかった髪の毛。
「しのぶちゃん、お久しぶり」
そう椅子に座るしのぶちゃんに話しかけると、驚いたような顔で私の方を振り返った。
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「いきなりごめんなさいね」
そう謝る私の代わりに炭治郎くんがここまでの経緯を説明すると、嬉しそうにしのぶちゃんは顔をほころばせる。
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年10月28日 20時