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16の時、杏寿郎さんの家に遊びに来た私は、ドアを叩いても誰も出てこないため、不思議に思いながら家に足を踏み入れる。


今日は必ず家にいると言っていたのに…と、倒れているんじゃないかと心配になって杏寿郎さんの部屋に行けば、空いた襖から特徴的な髪色が机に向かってなにかしているのが見える。








あの人が書き物なんて珍しい




悪趣味だと思いつつ、声をかけずにそっと近づいていくと、気配で気づかれてしまったのか、バッとこちらに顔を向ける杏寿郎さん。








「っ、」



私を見つけるや否や、必死に座布団の下に紙を隠したので、何か疚しいものなのかと無理やりひっくり返せば、一行目には私の名前。








「私宛…?」



内容なんて読まなくてもわかる。

これはどう見ても、私に宛てた遺書だった。









「やめて、こんなもの書かないで!」



そう言って、私は杏寿郎の手元にあった紙を奪い取る。







今すぐに焼いてしまおうか。

それとも破って捨ててしまおうか。






そんなことを考えていると、杏寿郎は困ったように眉を下げる。








「…泣かないでくれ」



乱暴な思いとは裏腹に、私が胸の前で抱き締めるようにその手紙を大切に持っていると、杏寿郎は優しく私の頬をひと撫でして、その手紙を奪おうとする。









「…A、離してくれ」


「離しません」



私が頑なに手紙を話そうとしないので、杏寿郎さんは…頼むと聞いたこともないような弱い声で言った。









「本当は、今すぐにでも燃やしてしまいたいんです」


「…燃やすのか」



私の言葉に顔を顰める杏寿郎は、思いもよらない返答に驚いたのか、手の力が少しだけ緩む。



その瞬間を狙って、手紙を引き抜こうと思い切り力を入れて後方へ下がれば、思ったより簡単に奪うことに成功し、私は盛大に尻もちを着いた。







「っA「来ないでッ」



杏寿郎といる間、転んだことなんてない私は、久しぶりの痛みに顔を歪めつつ、驚いたように手を伸ばす杏寿郎さんの動きを静止する。






「…」






この遺書は、あなたが心を込めて書いたもので、あなたの想いが詰まっている。




そんなものを、私が焼けるはずなかった。







そんな内容の話を叫ぶように伝えれば、杏寿郎は心底驚いたような顔で私を見る。






「…A」



あなたの死なんて考えたくもない。


そう嗚咽を上げていると、そっと寄り添うように抱きしめられた。









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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年10月28日 20時

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