過去 ページ41
・
「…私は、煉獄家に嫁いだ責務として、
子孫を残すことは成し遂げなければならない」
私自身子供が好きであったし、愛する人との子を残すことは本当に幸せなことだ。
しかし私には、杏寿郎といくら体を合わせても、妊娠症状が出ることはなかった。
「最近、私はこのまま
あの人の隣に居てもいいのかなんて考えてしまって」
子を産めない体であることなど、誰にも相談できるはずがなかった私は、目から自然と溢れそうになる涙を堪え、胡蝶さんに向き合う。
「…ですから、あと一年待って症状がでなければ」
あの人と離婚することも考えている。
そう口に出そうとすると、それは胡蝶さんによって止められた。
「…Aさん。一人で決断を急いではいけません」
もちろん、Aさんがどれ程の覚悟で仰っているのかは分かりますと、私が載せていた手を包み込んでくれる胡蝶さんは、悲しそうな顔で話す。
「…煉獄さんと、しっかり話し合いをしてみては？」
あの人のことですから、何よりも先にAさんを心配するはずですよと、にっこり口元に笑みを浮かべて話す胡蝶さんに、私は思わず笑ってしまう。
「煉獄さん、任務で御一緒させて頂いた時など、
Aさんの話をずっとしているんですよ」
「ふふっ嫌だわ。なんだか恥ずかしい」
鬼殺隊では炎柱の愛妻家ぶりは、誰でも知っている程有名ですと、微笑ましそうに話す胡蝶さんに、私はまた笑いを零す。
「とても嬉しいお話が聞けたわ
…でもね、彼に話すつもりはないの」
子を産めないなんて、女としての価値がない。
もちろん、そんなこと言う人でないのは分かっているが、世界中の人に知られても構わないから、あの人にだけは知られたくない。
それは恐らく、私の女としてのプライドだった。
そんな思いを察したように、胡蝶さんはおもむろに資料とり出し、机の上に広げた。
「これから、
私も婦人科方面の勉強していこうと思います」
それから、胡蝶さんとは定期的に会うようになり、私たちはいつの間にか、医者と患者という関係ではなく、心許せる友に変化した。
その頃から私はしのぶちゃんと名前で呼ぶようになり、しのぶちゃんは私のことを、亡くなった姉に似ていると言って慕ってくれるようになった。
◇◇
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1027人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：西川あや x他1人 | 作成日時：2020年10月28日 20時
