来客 ページ5
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杏寿郎のお葬式も終わり、これまでの数日間、鬼殺隊の方々やあまね様、柱の皆様もお顔をお見せになった。
杏寿郎の顔を最後に見るのは、彼の死を認めてしまうようでとても手が震えたが、そんな私の気持ちとは反対に、彼は随分と穏やかな顔で、眠っているように見えた。
「姉上、少し外の掃除をしてきますね」
杏寿郎がいなくなってからというものの、千寿郎は何も手につかないのか、よく玄関の掃除をするようになった。
「はい、お願いしますね」
そんな千寿郎を笑顔で送り出し、私も彼との約束のモノを探す心構えをしなければと気合いを入れ直す。
そして、洗濯を干す前に朝食の片付けをしてしまおうと、私が水道にたったところで、ガラガラと戸が開く音がした。
「千寿郎どうされまし、…あら来客ですか?」
廊下から何かを引き摺るような足音がして、急いで台所から出ると、杏寿郎と同じ隊服を着た男の子の姿。
そして、何故か槇寿郎さんのことを担ぐ2人。
「あなたが…」
毛先が赤みがかった髪の少年と目が合うと、悲しそうな顔で私を見る。
そんな少年に、お茶持っていきますからと笑いかければ、驚いたような顔で凝視してくる。
「どうぞゆっくりしていってね」
そんな男の子に、私は更に笑みを浮かべて台所に戻った。
◇
「お話中ごめんなさいね」
そうお茶を持って客室の襖を開ければ、千寿郎とさっきの男の子が私に顔を向ける。
「もし宜しければ、杏寿郎さんのお話
私も一緒に聞いていいかしら」
男の子同士の話に入っていいものかと悩んだが、その少年が力強く頷いてくれたので、私は千寿郎の隣にゆっくりと腰を下ろす。
「200人の乗客が乗る汽車で」
そう話し始めた男の子、もとい炭治郎くんから語られる、彼の最後。
ポロポロと隣で涙を零す千寿郎くんを横目で見て、私はただ背筋を伸ばして、その様子を想像した。
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「…そうですか、ありがとうございます」
そう言って私が頭を下げれば、続いて千寿郎も頭を下げる。
「いえ、力及ばず申し訳ありません」
そんな私たちより更に低く頭を下げる炭治郎くんに、千寿郎は気になさらないでくださいと微笑んだ。
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年10月28日 20時